市民雑学講座演題:時代考証から知る戦国時代の暮らし 講師:小和田泰経氏 早稲田大学エクステンションセンター講師/ 静岡英和学院大学講師 日時:6月17日(土)14:00~16:00 会場:サンパルネ・コンベンションホール 今回は、4月の講座「家康の人生を変えた戦い」の背景など戦国時代をより深く知っていただけるよう企画しました。「どうする家康」では斬新な時代考証のシーンを見かけますが、時代考証の実際について先生から興味深いお話をいただきました。 大河ドラマ等の時代劇はもとよりアマゾンプライムやネットフリックスのドラマ、コマーシャルに至るまで時代考証はかかせません。その時代のリアリティを感じてもらう事だけでなく、映像がその時代の建築様式や風俗と異なっていても、時代考証しておく事で、「演出上の創作」とする事が可能になるからです。 時代考証は脚本段階、撮影段階と二段階にわたり行われます。歴史上の新説が発見され、原作と異なってしまう事があるため、最近の時代劇はオリジナル脚本が増えています。オリジナル脚本では時代考証が大事になります。例えば、人の名前は、元服前は幼名、元服後は諱となりますが、諱は「忌み名」から来ており呪詛される恐れからごく近親者にしか明かされません。ドラマで「家康殿」などと気安く呼ぶ場面がありますが、実際には官位(例えば三河守殿)などと呼ばれたはずです。現代人には官位では誰かわからないので「家康殿」となっています。側室や猶子も現代の家族構成にはありません。特に猶子は名目上の子になる制度で、豊臣秀吉は藤原家の猶子となった事で関白となれました。言葉遣いも違います。武家の家庭内で夫は「殿様」妻は「奥様」と呼ばれました。 また、明治に入り西欧の文物が入ってきた段階で、かなり多くの用語が創作されており、「政治」「経済」「軍事」など現代では当たり前に使われる用語も「まつりごと」「あきない」「いくさ」などが当時の言葉になります。日付も江戸期以前は太陰太陽暦を使っており、1ケ月ほど時間軸が前にずれています。(例:太陽暦5月→旧暦4月)このような戦国時代と現代との違いについて脚本に齟齬がないかをチェックするのが脚本段階の時代考証となります。 次に撮影段階での時代考証です。特に注意が必要なのはビジュアルです。最近の大河ドラマではセットやCGを使って往時の居館や城郭を忠実に再現しています。「女城主直虎」の井伊谷城や「麒麟が来る」の明智城は往時の類似の居館をもとに現地にセットが組まれました。「坂本城」は現存する実際の図面通りにCGに再現されました。一方、「どうする家康」の清州城は中国の紫禁城のような映像となっており、一部批判もありましたが、これは田舎から出て来た家康が見た心象風景として捉るべきでしょう。時代考証した上でこの映像を作っているからです。甲冑も鉄砲が主流になる前と後では仕様が違います。鉄砲が主流となった後は当世具足という鉄板の一枚板の胴になっています。その他、衣装や風俗、動植物、遊びに至るまで、往時に合った映像となるよう気を配るのが撮影段階の時代考証の役目になります。 以上先生のお話のさわりを紹介しましたが、大河ドラマの写真等をスクリーンに投影しながら具体的にお話しいただいたので来場された方々にも理解しやすかったと思います。きっと先生から聞いた時代考証を頭の片隅に置きながら大河ドラマを見るという楽しみが増えた方も多いのではないでしょうか。 ◎参加者数 84名(市民52名 会員・ご家族32名) 会員名(敬称略) 青山、阿部茂、大内、岡田、尾島、小野(浩)、風間、加藤、上町、鴨田、 紅松(容)、黒田夫妻、小森、崎山、副島、髙橋(正)、高柳、滝川、田口、千葉、當間夫妻、 富澤、野村、平井、堀田夫人、真泉、町田(光)、三宅、安田、吉田勝 (副島 健 記、大内一男 写真)