世話人:黒田 祐司
副島 健
中沢 義則
果物屋の店先に桜桃(さくらんぼ)をよく見かけるようになりました。デザートのガラスの器に盛られた桜桃はまことに涼やかです。太宰治に「桜桃」という短編があります。この物語は妻と子を家においてやってきた飲み屋で桜桃をだされた主人公が、子が食べたら喜ぶだろうと思いながら、まずそうに種を吐くというシーンで終わります。無頼派と呼ばれた太宰の屈折した感情がよく顕れた作品です。太宰が自殺した忌日はその季節から桜桃忌という季語となっています。涼やかな桜桃にこうした屈折したニュアンスを込められるのも俳句の面白いところです。
さて、今回は第133回の稲酔句会の菊田一平さんの特選句を紹介いたします。竜湖さんは兵庫県から毎回オンラインで投句いただいています。
隔たりも会へば新酒の肴かな 竜湖
一平さんの評:歳時記的には「新酒」は晩秋の項目になる。句会ではその季節(当季)の句を出すのが一般的なので4月の句会に「新酒」の句を出すのはセオリー無視。けれどもコロナが5類に分類され自粛自粛の生活が解禁されたことを思えば、この句の状況はまことに喜ばしい。作者は仲間と五年間のあれやこれやを話題にしながら飲んでいるのだ。「新酒」の美味さがしみじみと伝わってくる。
次回の第135回稲酔句会は8月22日(木)13時(東村山社会福祉センター)を予定しています。俳句に興味、ご関心のある方は副島まで「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。
(副島鶴来 記)