演題 : 感覚を鍛えて認知症を予防する
講師 : 石浦章一氏(東京大学名誉教授)
日時 : 6月22日(日) 14:00~16:00
会場 : サンパルネ・コンベンションホール
高齢化を向かえた現在に生活する私たちにとって、とても身近な問題である認知症について、アルツハイマー型認知症の第一人者である石浦章一先生に講演していただきました。石浦先生は以前東村山市にも住んでおられたとのことです。
65歳以上の日本人3,625万人のうち443万人が認知症といわれています。認知症にあたる症状は、例えば、
・脳が普通の人より5%以上委縮しているのは40歳くらいから起き、何度も会った人の名前が
思い出せないのも20歳くらいから起きることで、正常な人でも起きるので認知症ではない
・新しい技術が習得できない、記憶テストの成績が悪くなる、のは軽度の前触れ
・今朝、何を食べたか覚えていない、家の場所を忘れる、のはここに来ていない人(認知症)
などと会場から笑いを誘っていました。
アルツハイマー病の人の脳にはアミロイドβタンパク質(Aβ)が主成分の老人斑というものができてくるということが40年くらい前に分かって、ボケる10年位前からAβが脳にたまり始め、軽度認知障害となると神経細胞が死に始め、認知症へと移行していくとのことです。認知症・軽度認知障害のサインとしては、意味不明なことを言い出す、温和だった人が怒りっぽくなる、「ものを盗られた」などの被害妄想、何度も同じ話・確認を繰り返すなどがあり、認知症になりやすい性格としては、まじめ、ガンコ、わがまま、几帳面、気むずかしい、消極的など、いわゆる家庭内で嫌われているような人ということでした。
老化の前触れとして、体力が落ちたと感じる、好奇心が減った、涙もろくなった、昔より悪口が増えた、などが挙げられ、元気なシニアでいるためにはまず、運動習慣をつけ、社会的活動をすることがよい。運動習慣をつけることで、女性は筋肉量の低下を防ぐ、男性は脂肪を減らすことができます。歩行速度としては、少し早く歩くくらいがよく、運動は午前中、筋肉がつくのは運動後1~2日、運動後は必ず休息日を持つことが大切です。
現在、70歳以上の女性の27.6%は孤食となっていて、少食からの低栄養、外食、コンビニ弁当の摂取増からの塩分・脂肪分の過多、食べることへの興味低下が問題点となっています。共食に積極的に参加し、会話やコミュニケーションをとることにより、食事がおいしく感じられるようになるとのことです。
臭覚を失うと、食品の腐敗臭に気づかない(食中毒)、ガス漏れに気づかない(ガス中毒)など危険が多くなり、ウツにもなりやすくなるので、4種類のエッセンシャルオイルを深く吸込む臭覚トレーニングを続けることなどが大切です。難聴など耳が聞こえない、耳が遠くなることは、認知症の最大の危険因子で、転倒の危険が上がる、孤独が深まる、社会的に隔離されてしまうなどの問題があります。周囲の音に意識を向けることで、音に敏感になるとのことでした。
最後に、今日の講演をまとめ、その内容を家族に話して聞かせるなど、インプット、アウトプットの練習をすることが大切とのことでした。
老化しないための秘訣として、社会とのつながりを持つことが大切で、
・誘われたら断らない
・なるべく年の離れた友人を持つ
・家族・親族と良い関係を築く
を挙げられました。
認知症はとても身近な問題で、自分自身はもとより、親の認知症への不安などで悩んでいる人も多くいると思われます。石浦先生の講演は、肩肘も張らずとても分かりやすく、ユーモアたっぷりでした。そして、運動の大切さと臭覚、聴覚など自分の持つ五感の低下を抑えることの大切さを学びました。
◎来場者数 144名(市民等105名 会員・ご家族39名)
会員名(敬称略) 青山、阿部茂、阿部(淳)、市川(彰)夫人、一色、井原、大内、岡田、小野(浩)、加藤、鴨田、工藤、黒田夫妻、小林(俊)夫妻、小森、崎山、副島、高林、滝川、田島夫妻、田代、田邉、當間、當麻、常世田、戸田夫人、富澤夫人、中島、中村(幸)、平井、藤井、真泉夫妻、町田、三宅、吉田勝
(工藤 崇士 記、中村 幸宏 写真)